機関誌より『ことばひろい』を掲載しました。
■ 第2期
■ 第1期
第02回:『 「かわいいよ!」「好きだよ!」「きれいですね!」 』
シャローム 本庄ゆき子
- 「かわいいよ!」「好きだよ!」「きれいですね!」
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毎日「かわいいよ!好きだよ!」の言葉と、一緒に小さな花や草をもらっていた。
なんというシアワセ。贈り主は三十代の独身男性H・Kさん。 春一番はフキノトウ。長くのびて花のようになったものも「かわいいよ!」の言葉と一緒に手渡してくれる。 そして芽を出して間もなくのフキの葉、黄色のタンポポと続く。
ハルジオン、ウマノアシガタ、ゲンノショウコ、月見草、ハンゴンソウ、萩、ススキ。 ススキは素手で折るのは相当骨が折れる。どんなふうにして折って私のもとへ届けたのかと思うと、おかしいやら恐縮やらでどうしたらよいかわからない。
あまりにもうれしかった日、帰宅後結婚して二十五年以上たつ夫に自慢してみた。 「私ね、このところ毎日独身の男性から花をプレゼントされてるんだけど」「アドナイ・エレの誰かか?」「うん、H・K君。どうしてわかったの?」 「だって…(あなたがそんなにもてる訳ないでしょう?)」。
その通り。「白髪があるな、おばさんよ!」と、日頃村塚さんに言われている。 さらに孫までいる正真正銘の、立派なおばさんなのだ。夫の反応は当然といえる。H・Kさんは奇特な人なのだ。 すごい才能の持ち主なのだ。私もそういう才能が欲しい。
この四月に、私もH・Kさんもシャロームのアドナイ・エレに移った。変化に弱い彼のこと。どういう風に新しい場所に慣れていくのか予想がつかなかったが、心配程ではなかった。
アドナイ・エレ以外の作業の体験ということで、同じシャローム内のウッド・ウイズ(木工と受注)に行った彼は、そこが気にいって働き続けている。
移った当座は私の顔を見ないように、目を合わせないようにしていた。新しい冒険に出ようとしているのに、連れ戻されたらかなわないと思ったらしい。 仕事は順調にこなしている。作業以外でもウッド・ウイズの回りの人にシアワセをあげることを期待している。
七月からアドナイ・エレに新しく来たS・Sさんがまた奇特な男性で「きれいですね!」とよくいってくれる。
同い年の同僚は「困ってしまうわ」と恐縮しているが、私はH・Kさん。の後輩が来たと喜んでいる。「きれいでいてくださいね(笑顔を忘れないで)!」とのエールだと思えるから。